済州島訪問レポート

図1.韓国南海の済州島

はじめまして。日本アジアカワウソ保全協会の金炫禛(キムヒョンジン)と申します。普段は、自然環境のコンサルタント会社に勤めながら、カワウソの研究をしています。主なフィールドは韓国で、カワウソの生態・生息環境・人との関わり等を広く調べています。

カワウソ調査で韓国の済州島(Jeju-do)を訪問した際のことを簡略に紹介したいと思いますので、ご一読いただければ幸いです。

目次

済州島のカワウソロードキル現場見学

2018年1月10日、韓国済州島の済州市(図1)でユーラシアカワウソがロードキルに遭う事故がありました。昨年12月、現地の社団法人韓国カワウソ保護協会のご協力のもと、ロードキル現場と周辺環境を訪問してまいりました。

済州島は、同国の代表的な火山島で、島の河川は透水性地質の特性により普段は流水のない涸れ川がほとんどです。一部水量の多い河川もありますが、同島でカワウソが持続的に生息するには河川環境の条件がよくないというのが一般論です。

韓国本土から約80㎞離れている同島では、1900年代初期の記録を最後にカワウソの生息は確認されていません。ロードキルされたカワウソがどうやって島に来たのか、あるいはどうやって済州島で見つかることなく生き残っていたのかを明らかにすることは、今後の保全対策につながる大きなヒントになります。

ロードキル現場は済州島北部の海岸線から直線で4㎞ほど離れた交通量の多い道路でした(図2)。この現場の近くを通る河川から島北部の海岸までを辿りながら周辺環境を確認しました。

図2.カワウソがロードキルに遭った道路の様子

上記の通り、済州島の多くの河川流域は透水性のある火山岩盤で構成されており、ほとんとが通常は乾いている水無川ですが、地下を通った雨水が湧き出し、地表を流れる場所が点在していました(図3)。しかし、海岸や河口の一部を除くと、川には餌となる魚も少なく、カワウソにとって良い環境ではありませんでした。

図3.下流の方へ行くほど基底地下水量が多くなる済州島の河川の様子

おそらくカワウソは、海岸の河口から水系をたどって上流方面へ移動し、ロードキルに遭ってしまったと考えられます。ロードキルされた個体は、韓国本土のカワウソと同じ遺伝子型だということがわかっていますが、その由来について結論を出すにはまだ調査と検討を重ねる必要があります。これからも韓国のカワウソ保護協会をはじめ、様々な機関と協力しながらカワウソの保全につながる調査研究をしていきたいと思います。

Field trip to the otter roadkill site on Jeju island

On 2018, there was a otter roadkill accident in Jeju Island, Korea. Otters have not been found on the island since the early 1900s.

In December of last year, we visited the roadkill site and the surrounding environment in cooperation with the Association of Korean Otter Conservation. The origin of this otter is unknown. If it becomes clarify, will be a great hint for conservation measures.

It is probable that an otter moved upstream from the estuary along the river system and encountered a roadkill.

シェアで応援お願いします!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次