カワウソを飼ってもいいの?
カワウソは絶滅の危機にある野生動物であり、ペットにするべきではありません。
日本では、かつてないカワウソブームが巻き起こっています。メディアやSNSで注目を集める一方、その裏ではペット飼育や違法取引に関する問題が深刻化しています。ペットとして取引されているのは、主に小型種のコツメカワウソです。

ワシントン条約で国際取引禁止に
近年における日本でのコツメカワウソのペット人気により、原産国であるインドネシアやタイから多くの幼獣が密輸され、まさに他国のカワウソをも絶滅させかねない状況となっています。このような状況を受け、コツメカワウソは2019年にワシントン条約「附属書Ⅰ」に掲載され、国際取引禁止となりました。ペットビジネス目的で輸入することができなくなったということです。しかし、これだけで密猟や密輸がなくなるわけではありません。ペット需要がある限り、密輸した個体や、そのこどもが偽って飼育・販売される可能性があります。
密猟で殺されてしまう親カワウソ
カワウソは、本来家族単位で暮らす社会性のある動物です。密猟の標的となるのは、主に赤ちゃんやこどものカワウソですが、その際、強い噛む力を持つ親のカワウソは邪魔とみなされ、殺されてしまうことがあります。
密輸途中で死亡するこどもカワウソ
密輸の際、赤ちゃんやこどものカワウソは、スーツケースや小さな手荷物などに長時間押し込められた状態で輸送されます。まだ十分に成長していない幼獣にとっては極めて過酷な環境であり、発見時すでに死亡している例も少なくありません。
ペットに向かない5つの理由
そもそも、野生動物であるコツメカワウソは、個人による飼育にはまったく適していません。
以下に、その主な理由を示します。
強力な顎と歯、けたたましい鳴き声
魚の骨や、カニの甲羅を割るほどの強力な顎と歯を持っています。犬のようなしつけもできません。
また鳴き声は甲高く大音量ですので、近所迷惑となる可能性が高いです。

高額なエサ代、ゆるくて強烈な匂いのフン
毎日、生の魚や肉、野菜や果物などが必要です。そして、強烈な匂いのフンをします。フンは水っぽいため掃除にも手間がかかります。
高額な水道代と電気代、多頭飼いの必要もあり
カワウソは群れで広い範囲を行動します。運動量も多いので、広大な飼育スペースがかかせません。水生環境で暮らすので、大きなプールとそれに伴う水道代、アジア熱帯のような気温を維持するための電気代も必要です。好奇心旺盛で手先が器用なので、周りに置くものにも気が抜けません。また、群れで暮らすカワウソにとって、少数で飼うことは大きな精神的苦痛をもたらすと考えられています。

診てくれる動物病院はほとんどない
カワウソをはじめ、野生動物(エキゾチックア二マル)を診てくれる病院はほとんどありません。病気やケガをしたときに対応できず、死なせてしまうことになりかねません。
動物由来感染症のリスク
噛まれるなどの接触により、動物由来感染症(ズーノーシス)を引き起こす可能性があります。野生動物からの感染症には重症化するものや有効な治療法が見つかっていないものだけではなく、未知なものも多いと考えられています。
WWFジャパンが制作した動画をご覧ください。 #ペットにしても幸せにできない動物
SNSでペットにされた野生動物に「いいね!」
――それ、本当に「良い」の?
SNSで「カワウソ」と検索すると、カフェでカワウソを抱っこしている写真や、肥満のカワウソなどに「かわいいカワウソ」といったキャプションが付いた投稿が多く見られます。しかし、一見可愛らしく思える写真でも、野生動物のそういった姿は本当に「良い」ことなのでしょうか?
カワウソに限らず、珍しい動物をペットにしている写真や動画は見映えがするので、「いいね」や「高評価」、「視聴者数」を稼ぎやすく、それが収入につながることもあり、多くの投稿が見受けられます。そのような動物たちの投稿が拡散されると、簡単にペット需要を後押ししてしまうのです。どうか「いいね」を押す前に、それが本当に拡散するべき情報なのか?その先に何が起こりうるのか?を考えてみてください。
「野生動物はペットにするものではなく、守るべき存在である」という考えが、より多くの方に広まることを願っています。
