IUCN OSG議長より

IUCNカワウソ専門家グループ議長からの応援メッセージ

IUCN-SSCカワウソ専門家グループ議長 ニコル・ドゥプレ氏
IUCN-SSCカワウソ専門家グループ議長 ニコル・ドゥプレ氏

日本の皆さん、こんにちは!IUCN-SSC(国際自然保護連合 種の保存委員会)カワウソ専門家グループの議長、ニコル・ドゥプレです。私は1974年にIUCNのカワウソ専門家グループを設立し、世界のカワウソ13種の保全のため邁進して来ました。今日では世界中の345名の会員たちが、保全の重要性とカワウソにとって何が必要か伝えるべく活動しています。

日本は、かつてカワウソの固有亜種が生息していましたが既に絶滅してしまい、二度と戻ってくることはありません。近年、海外由来と考えられるものの、長崎県対馬でカワウソが再発見され、日本で再びその保全が大変重要な課題となっています。本来、カワウソはとても適応能力の高い動物で、適切な保護の下、きれいな川と餌となる魚がいれば十分に生存できる動物です。

他の世界の例を挙げると、近年大都会であるシンガポールにもカワウソが自然に復帰し、現在では大勢の市民が見守る中カワウソの家族が公園を横切り、あちこちの餌場を行き来する姿が見られています。イギリスも1970年代に絶滅の危機に瀕したものの、保全の努力により個体数が回復し、現在は各地で確認されています。また環太平洋に広く生息し、同じくカワウソの仲間であるラッコも1900年代には絶滅が危ぶまれましたが、積極的保護活動により特に北アメリカでは個体数が大きく増加しました。

このように努力次第でカワウソと人間の共存は十分に可能ですが、依然世界中で絶滅の危機にさらされていることには違いなく、湿地の縮小や漁民との衝突があれば、カワウソの個体数は簡単に減ってしまいます。またその他にも様々な脅威があり、例えば現在急激に経済発展を遂げている中国などでは富裕層にカワウソの毛皮製品に対する大きな需要があり、乱獲が懸念されます。一般的に国や都市の繁栄が進めば、野生動物はすみかを追われることになるのです。

カワウソは大変カリスマ性のある魅力的な動物で、特にその赤ちゃんはとても可愛らしい容姿をしています。そのため近年の日本では、”カワウソカフェ”などの商業施設が増えており、目にしたことがある方も多いかと思います。一見何の害もなく楽しそうに見えますが、こうしたペットとしての需要は、東南アジアに生息する野生のカワウソの多くを死に追いやる可能性があります。なぜなら、通常数頭の赤ちゃんカワウソを捕まえてインターネット上で売るために、他の大人のカワウソが時には全頭、10頭以上も殺されることがあるからです。またこのようにして捕まえられたカワウソたちの多くが日本に密輸され、その大部分が不適切な環境により輸送中に死亡してしまいます。この問題も、早急に解決が求められます。どうか、我々に力を貸してください!

皆さんの情熱と協力無しでは、カワウソの保全活動は成功させることができません。そのため、より全員が一丸となり活動に取り組むため、この協会が設立されました。そして、カワウソと地球のより良い未来のため我々はこれらの努力を確実に啓蒙していかなければなりません。日本アジアカワウソ保全協会の成功を、応援しています!