カワウソ図鑑– otter –

世界に生息する全13種のカワウソのうち、当協会が保全活動を行うアジアのカワウソをご紹介します。

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ユーラシアカワウソ Eurasian otter

学名Lutra lutra
分類食肉目 イヌ亜目 イタチ科 カワウソ亜科 カワウソ属
分布・環境カワウソの仲間の中で最も広く分布する種である。
アイルランドから中国、東南アジアに至るまでヨーロッパ、アジア、アフリカの 一部に広く分布する。
全長102~138 cm(頭胴長 57~70 cm、尾長 35~40 cm)
食べ物主に魚を好み、両生類、甲殻類も食べる。
保全状況評価IUCNレッドリスト:NT
ワシントン条約附属書I

主に単独で行動する夜行性のカワウソであるが、スコットランド諸島などの一部の環境では昼間の行動がみられるなど、環境への適応能力が高い。イギリス諸島や韓国等の一部の地域では回復の傾向がみられるが、多くの地域では、近年の水質汚染、生息環境の破壊による個体数の減少が報告されている。また、回復傾向にある地域においては、カワウソのロードキル対策や、本種の保護と漁業との両立が大きな課題となっている。

ニホンカワウソ Japanese otter

環境省は、北海道のカワウソと本州以南のカワウソを、ユーラシアカワウソの亜種としている。しかし、DNAの研究ではニホンカワウソを独立種として扱うかどうかの結論が出ていない。

学名Lutra lutra または Lutra nippon
分類食肉目 イヌ亜目 イタチ科 カワウソ亜科 カワウソ属
分布・環境かつて北海道から九州まで広く分布していたが、狩猟により激減。高知県で1979年に最後の個体が確認された後、2012年に環境省は絶滅種とした。その後、2017年に対馬でヤマネコ調査のために設置された自動撮影装置によって生息が確認された。ミトコンドリアの分析から、このカワウソは韓国南部の海岸から流れ着いたと考えられる。
全長102~138cm
食べ物魚、エビ、カエルなど
保全状況評価IUCNレッドリスト:NT
ワシントン条約附属書I

北海道から九州まで広く分布していたが、毛皮や肺結核の薬として使う肝臓目的の狩猟で激減し、1928年に狩猟禁止となった。1954年に愛媛県で生息が確認され、1965年には国の特別天然記念物に指定された。しかし、愛媛県では、飼育による保護と生息地保全による保護か対立が起こった。高知県でも生息が確認されたが、保護意識が広がらず、網で溺死したり、撲殺されたりして、1979年に高知県新荘川での観察が最後となった。

スマトラカワウソ Hairy-nosed otter

学名Lutra sumatrana
分類食肉目 イヌ亜目 イタチ科 カワウソ亜科 カワウソ属
分布・環境マレーシア(半島、ボルネオ島)、タイ、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、インドネシア(スマトラ島、カリマンタン島)、ブルネイに分布し、熱帯雨林や泥炭湿地林が主な生息地と考えられるが、アブラヤシ植林地など様々な環境で交通事故死体が確認されている。
全長105~113cm
食べ物魚、ヘビ、カエル、トカゲなど
保全状況評価IUCNレッドリスト:EN
ワシントン条約附属書II

交通事故死体や自動撮影装置によって偶発的に確認され、ユーラシアカワウソの近縁種であるため単独で生活していると考えられる。絶滅危惧種であるが、主な生息地と考えられる熱帯雨林や泥炭湿地林の保全以外の対策が難しい。インドネシア等で、国内で違法に取引がされている。生息地が研究の難しい環境であるが、タイ、カンボジアで生態研究がある。木の根元に後ろ向きにお尻を上げて糞をしたり、トンレサップ湖では水面が上昇した時に木に登って休息するなど興味深い行動をする。

コツメカワウソ Asian small-clawed otter

学名Aonyx cinereus
分類食肉目 イヌ亜目 イタチ科 カワウソ亜科 ツメナシカワウソ属
(鈍い爪を意味するAmblonyx属とする説もある)
分布・環境東南アジアに広く分布し、インドネシア・フィリピンの島嶼部にも分布している。最北部はブータン・ネパール・中国南部であるが、ヒマラヤ山脈など高地に分布している情報はない(もしくは確認が取れない)。比較的浅い水辺を好むようで、川の支流や灌水期は水田域を生息域にすることもある。
全長65.2~93.9 cm
食べ物甲殻類(エビ・カニ)、魚、軟体動物(タニシなど)、カエル、ヘビなど
保全状況評価IUCNレッドリスト:VU
ワシントン条約附属書I

コツメカワウソは小型であることもあり、欧米や日本の動物園水族館で広く飼育されている。群れで生活する動物でもあり家庭でペットとして飼育するには適していないが、日本ではテレビ番組やYoutuberの影響でペットとして飼う人が増えたために違法な輸入が多く摘発されてきている。食性についての研究は行われているが、観察が難しい動物であり、社会構造についての研究は無く、ビロードカワウソと類似したペアを中心とした社会構造を持っていると考えられている。東南アジアの多くの国が保護しているが、インドネシアとカンボジアでは保護獣とされていない。

ビロードカワウソ Smooth-coated otter

学名Lutrogale perspicillata
分類食肉目 イヌ亜目 イタチ科 カワウソ亜科 ビロードカワウソ属
(鈍い爪を意味するAmblonyx属とする説もある)
分布・環境南アジア大陸部、中国南西部、東南アジア(大陸部、スマトラ島、ボルネオ島、ジャワ島、シンガポール島)、飛び地的にイラクにも分布する。大河川から小河川、水田、養魚池、氾濫原、マングローブ域、サンゴのみられる海岸線と、広く様々な環境に生息する。
全長全長106~130cm (7~11kg)、頭胴長65~79cm、尾長40~50cm
食べ物おもに魚類を食う。他に、甲殻類、カエル、鳥類、ネズミなども食う。
保全状況評価IUCNレッドリスト:VU
ワシントン条約附属書I

ビロードカワウソは、尾が扁平なことで他のカワウソ類と区別できる。家族からなる群れで暮らす。地域によって活動時間帯が異なり、昼行性の地域と夜行性の地域がある。バングラデシュやインド、中国、東南アジアでは、魚を網に追い込むためにカワウソを漁労に利用してきた。シンガポールの都市公園に生息するビロードカワウソは、インターネット上の映像でも見ることができる。生息地の減少や狩猟のために個体数は減少している。もっとも身近なカワウソなのではないだろうか。

ラッコ Sea otter

学名Enhydra lutris
分類食肉目 イヌ亜目 イタチ科 カワウソ亜科 ラッコ属
分布・環境アメリカのカリフォルニア・サンディエゴ沖から北のアリューシャン列島、そして北海道の霧多布沖まで分布しているとされている。カワウソの中で唯一完全海生の動物で、生涯上陸しない個体もいると言われている。毛皮目的の乱獲で大きく個体数を減らしていたが、野生下の保全により個体数が戻りつつある。
全長107~145cm
食べ物軟体動物(貝・タコ・イカ)、ウニ、魚など
保全状況評価IUCNレッドリスト:EN
ワシントン条約附属書I

ラッコは、他のカワウソと同様に皮下脂肪をほとんど蓄えずに冷たい海で生活しているため、毎日多くの餌を必要とする。単独で生活している個体もいれば、ある程度まとまった個体数が同じ場所で生活している場合もある。野生下では個体数が増えてきたが、救護以外の捕獲はほとんど行われていないため世界中の動物園/水族館では姿を消しつつある。

IUCNレッドリストとは、国際自然保護連合(IUCN)が作成する絶滅のおそれのある野生生物のリストです。専門家の調査結果に基づき絶滅危機の度合いを査定しています。

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