ミャンマー南部のアンダマン海には、東西 100 km、南北 400 kmの範囲に、約800の島々からなるメルギー諸島が広がっています。メルギー諸島の北端の都市ミェイクまでは、ヤンゴンから1時間ほどのフライトです。広い範囲に島々が分布しているので、大陸部近くのマングローブ域から、外洋に面したサンゴの発達した地域まで、様々な環境のモザイクになっています。この地域には、広い範囲でビロードカワウソを見ることができます。カワウソの他にも、ジュゴンやカワゴンドウといった哺乳類の生息地としても知られています。自然が豊かなだけあって、漁業も大変盛んで、大きな島には集落があり、アミで作られたミェーンガピと呼ばれる発酵食品や、干しエビの生産でも有名な地域です。
ビロードカワウソ・ウォッチング
ビロードカワウソは、主に昼行性なので日中にボートから観察することができます。現地では、4〜5人乗りの小さなエンジンボートを借り上げて調査に向かいます。ミェイクから1時間もボートを走らせると、マングローブに到着します。観察時にはデジカメで記録を取るのですが、ボートの水しぶきや雨季のスコール対策で、常にカメラにレインコートをかぶせています。最初の頃は、ビニール袋で手製のレインカバーを作って、カメラをカバーしていましたが、最近は、thinkTANKというメーカーのレインカバーを使っています。雨季の土砂降りでも、風が強くて全身に飛沫を浴びるような状況でも、カメラを守ってくれる優れものです。カワウソを観察するときには、少し離れたところから観察するため、600mmの望遠レンズを使って撮影しています。これくらいの望遠レンズを使うと、双眼鏡で観察しているのに近い見え具合です(Photo 1)。
野生動物なので、不用意な近づき方をすると、警戒されてしまいます。しかし、なかには好奇心旺盛な個体もいて、ときにはカワウソの方から近づいて来ることもあります。Photo 2は、exifによると撮影距離が35.5mですが、このあと、この個体は、私らに興味津々で、止まっているボートに向かってどんどん近づいてきました(Photo 3)。
Photo2の46秒後には、ボートのすぐ近くまで様子をうかがいにやってきました。このとき、撮影データでは、596cmとなっていました。動物写真撮影をしている人はよく知っていることですが、被写体となる動物たちにも個性があって、カメラを向けると逃げ出す個体もいれば、カメラを向けられてもあまり気にしない個体もいます。写真を撮らせてもらうには、こういう個体に出会えるラッキーが必要です。
ビロードカワウソは、単独で見かけることもあれば(Photo 4)、ペア(Photo 5)やグループで行動することもあります。ビロードカワウソたちが大きなグループで、わらわらと行動している姿が一番微笑ましく感じます(Photo 6)。Photo 6のグループを観察したのは、ボートでお昼を食べた直後でした。先に昼行性と書いたように、こうして日中にグループで活動してる姿を見かけることもあります。泳いでいる姿を見ることができれば、魚を獲って食べる姿を見ることもできるでしょう。
最近は、カメラの性能が改良されて、薄暮時ならば、肉眼での観察が困難になってもしばらくは、撮影しておけば、あとからカワウソたちが何をしていたのかを見ることができるようになりました。ある日、観察していたカワウソたちが魚を食べることに没頭していて、日が暮れて暗くなっても魚を食べ続けていたことがありました(Photo 7)。すでに肉眼では、薄ぼんやりとしか確認できません。ですので、ファインダーを覗いてもピントもわからないような状況でした。そんな状況でも、オートフォーカスはカワウソを捉え、高感度(ISO102400)に助けられ、暗がりでの様子を知ることができました。
これくらい見ることができるのだったら、カワウソ・ウォッチングに行ってみたくなりませんか? 毎回、カワウソに出会うことは難しいですが、カワウソを探している間は、野鳥観察を楽しむこともできる地域です(Photo 8, 9, 10)。ミェイクの街には、美味しいシーフードも待っています。
メルギー諸島には保護区やコミュニティフォレストなどもありますが、今回紹介した地域は、保護区には指定されていません。漁業も盛んで、人の暮らしている地域の中で、カワウソたちも生活しています。こうした保護区以外の地域に生息している野生動物たちと共存を続けていくことも、大きな課題なのではないでしょうか。
Smooth-coated otter (Lutrogale perspicillata) in Myeik Archipelago, Myanmar
Myeik Archipelago is located in the eastern part of Andaman sea, southern Myanmar. There are many varieties of environments such as the mangroves, the muddy banks, the rocky reefs and the marine coral. Smoot-coated otter, Dugon and Ayeyarwady Dolphin (Irrawaddy Dolphin) occur in these environments. Also, the fishery activities are very high and important in this area. Ngapi (fermented shrimp paste) and the dry shrimp are the famous products.
The nature watching tour program is not well developed in this archipelago. But there are many tour programs of the birding in Myanmar. So, there may be a potential to develop this kind of tourisms. The otter could be seen in the channels of the mangrove forest by using a small engine boat in a daytime, because Smooth-coated otter is usually diurnal. The pairs and the groups were observed, and the solitary otter also was seen in the bank and the channels. The otters were resting on the bank, swimming along the channel and catching the fish and the aquatic. There are also good opportunities for birding on the birds of prey, Kingfishers, Hornbills, and Lesser Adjutant in Myeik archipelago. There may be a chance to develop the nature watching tours with combining the otter watching with the birding.