動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針の改正案に対する意⾒の募集(パブリックコメント)について

環境省が意見を募集している「 動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針の改正案」に関して、日本アジアカワウソ保全協会は、2月28日に次のコメントを提出しました。

目次

「普及啓発・多様な主体との相互理解の醸成」

該当箇所

P11のウ

動物を見せることや動物と触れ合うことを目的とした、動物の展示利用については、多種多様な利用形態ごとに意義と課題を整理するとともに、情操の涵養などその効用を効果的にもたらすこと及び感染性の疾病の予防等、動物の健康及び安全を確保することの双方の観点から、展示利用における動物の取扱いに関する基本的な考え方を整理・検討すること。また、学校飼育動物の取扱いに関しても同様に基本的な考え方を整理・検討すること。

意見内容

講ずべき施策の1つとして、展示に用いられている野生動物が適正に輸入されたものであることの証拠資料の表示を義務付ける等、人畜共通感染症のリスクを回避し、密輸を防ぐ対策も検討課題に入れるべきである。

理由

昨年、コツメカワウソとビロードカワウソがワシントン条約において附属書IIから附属書Iに登録が変更になった。これに伴い、この2種は種の保存法において、販売する場合は密輸個体ではないことを示して登録を行うこととなった。販売は登録制度による規制を受けるが、動物カフェ等の展示では登録する必要はない。人畜共通感染症の問題は、検疫を受けることなく持ち込まれる密輸の場合は大きなリスクとなりうる。このようなリクスを回避し。密輸を防ぐためにも、動物愛護管理法においても対応する必要があると考える。

資料

北出智美・成瀬唯.2018.日本に向けたカワウソの違法取引と高まる需要の緊急評価, TRAFFIC ジャパン.

TM Potter, JA Hanna, L Freer. 2007. Human North American River Otter (Lontra canadensis) Attack, Wilderness & environmental medicine, 18: 41-44.

「普及啓発・多様な主体との相互理解の醸成」および「適正飼養の推進による動物の健康及び安全の確保並びに返還・譲渡の促進」

該当箇所

p.11のウ(2)

(2)適正飼養の推進による動物の健康及び安全の確保並びに返還・譲渡の促進
 ①現状と課題適正飼養を推進するためには、飼い主に対する教育が重要であり、国、地方公共団体等によって、そのための様々な取組が行われてきているが、依然として安易な購入と飼養放棄、遺棄、虐待等の問題が一部において発生している。こうした問題を踏まえ、令和元年の動物愛護管理法改正により、遺棄、虐待等に対する罰則の引き上げ等が行われた。
また、都道府県、指定都市及び中核市における犬及び猫の引取り数は、平成16年度の年間約42万頭から平成30年度は年間約9万頭、殺処分率は平成16年度の約94%から平成30年度の約42%へと大幅に減少した。一方で、殺処分を減らすことを優先した結果、譲渡適性のない個体の譲渡によるこう傷事故の発生や、譲渡先の団体における過密飼育等、動物の健康及び安全の確保の観点からの問題が生じているとの指摘がある。今後は、令和元年の法改正により地方公共団体が所有者不明の犬又は猫の引取りを拒否できる場合が規定されたことや、早くから引取り数・殺処分率の削減等を進めてきた地方公共団体や野犬等が多く収容される地方公共団体もあることを踏まえ、殺処分を減らしつつ、動物の適正飼養を推進する必要がある。

 ②講ずべき施策
  ア 犬又は猫について、地方公共団体からの譲渡時、動物取扱業者からの販売時等において遵守すべき飼養保管の基準等に基づき、原則として繁殖制限しなければならないことに係る説明が行われるようにすること等、安易な飼養の抑制等による終生飼養及びみだりな繁殖を防止するための不妊去勢措置の徹底、マイクロチップの装着等による所有明示措置の推進、遺棄の防止等により、地方公共団体における犬及び猫の引取りについて、更なる減少を図ること。

  イ 犬及び猫の殺処分を透明性を持って戦略的に減らしていくことが必要であり、下記の殺処分の3分類の特に②に属する個体の返還及び適正な譲渡促進を積極的に進め、令和12年度の殺処分数について、平成30年度比50%減となる概ね2万頭を目指す。また、①、③については飼い主責任の徹底や無責任な餌やりの防止により引取り数を減少させ、結果的に該当する動物の数を減らしていくこと。
   ①譲渡することが適切ではない(治癒の見込みがない病気や攻撃性がある等)
   ②①以外の処分(愛がん動物、伴侶動物として家庭で飼養できる動物)
   ③引取り後の死亡
  ウ 野犬が多い地域等では、引取り数・殺処分率又は殺処分数を減少させるため、集中的に捕獲を実施し、再生産を抑制することが必要な場合があり、短期的にこれらの数値が増加してもやむを得ない面があるなど、中長期的な視点に立ち、地域の実情に応じた殺処分と譲渡の考え方を整理するとともに、必要な普及啓発等の取組を推進すること。
  エ 犬及び猫の譲渡の促進にあたっては団体譲渡が効果的であることを踏まえつつ、適正な団体譲渡の推進に向けた現状・課題を整理し、対応について検討すること。
  オ 令和元年の法改正において、動物愛護管理センターとしての機能・業務が明確化されたことを踏まえ、災害対応や多様な関係者の参画・協働にも役立つ地域拠点としての役割も考慮して、引き続き、返還・譲渡の促進に向けた施設整備を推進すること。
  カ 愛護動物の殺傷、虐待等について罰則が強化されたこと及び獣医師による虐待の通報が義務化されたことの周知徹底等を図るとともに、通報への対応等の明確化及び必要な体制の構築について検討すること並びに警察との連携をより一層推進することにより、遺棄及び虐待の防止を図ること。
  キ 終生飼養の責務は、飼い主が最後まで責任をもって飼育することを求めるものだが、やむを得ない理由により適切な飼養管理ができない場合には、動物の健康・安全の保持の観点から行う譲渡や引取り等が否定されるものではなく、こうした終生飼養の趣旨の適正な理解が進むよう、普及啓発に努めること。
  ク 不適正飼養等に起因して、周辺の生活環境が損なわれている場合や、動物が衰弱する等、虐待のおそれがあると認められる場合には、報告徴収・立入検査が可能となったことを踏まえ、通報への対応等の明確化及び必要な体制の構築について検討する。

意見内容

動物の健康について、ストレス疾患・心の病気と呼ばれる精神面での健康についても明示的な記述を盛り込むべきである。

理由

犬、猫、動物園で飼養される動物、産業動物に関して、ストレス疾患、心の病気、ストレスの治療が課題となっている。また、動物園での環境エンリッチメントについては来園者の関心も高い。よって、この問題を明示的に扱うことが必要と考えられる。

資料

  1. 成島 悦雄. 2003. 動物園動物における環境エンリッチメントの試み(<特集>応用動物行動学会・日本家畜管理学会 上野動物園共催シンポジュウム報告), 日本家畜管理学会誌, 39 (1 ): 2-4.
  2. 植竹 勝治・田中 智夫. 2003. 産業動物における環境エンリッチメントとその効果(<特集>応用動物行動学会・日本家畜管理学会 上野動物園共催シンポジュウム報告), 日本家畜管理学会誌, 39(1): 5-8.
  3. 酒井 秀嗣・佐藤 恵・若林 修一. 2012. ふれあい動物園における展示動物のストレスに関する一考察, 日本大学歯学部紀要, 40:57-61.

動物取扱業の適正化

該当箇所

p.18の(5)

(5)動物取扱業の適正化
 ①動物現状と課題
  飼養管理が不適切な動物取扱業者が依然として見られるなど、動物取扱業者による不適正飼養の実態があることから、令和元年の法改正において動物取扱業者に対する規制が強化された。
こういった背景を踏まえて、動物取扱業のより一層の適正化を図るため、新たな制度の着実な運用を図る必要がある。

 ②講ずべき施策
 ア 登録制度の遵守に加え、動物取扱責任者要件の厳格化、帳簿の備付け義務、遵守基準の具体化、勧告・命令の権限強化等、新たな規制の着実な運用を図ること。
 イ 動物取扱業の更なる適正化を図る上で、地方公共団体による動物取扱業者に対する周知や指導・監視の強化、規制の実効性の確保が必要であり、国によるこれらに対する支援を検討すること。
 ウ 動物取扱業者や事業者団体が社会において果たすべき役割を自ら考え、優良な動物取扱業者の育成及び業界全体の資質の向上を図るようその主体的な取組を促進すること。

意見内容

動物を取り扱う施設について、動物園や水族館等博物館相当施設と私的商業施設の明確な区分および基準を記載するべきである。

理由

現状ではペットカフェなど動物を商業利用する小規模私的施設と専門の飼育係や獣医師を置く動物園や水族館といった施設の法的区分が曖昧である。また動物園と銘打っていても実態はペットショップのような場合もあるが、行政としても本法律で明確な基準がないために指導が難しい点が指摘されている。そのため、イギリス等で行われているように動物を取り扱う施設区分やその基準を明確にした上で登録制とし、適切な飼育環境が提供できていない場合は営業をすぐに停止させる仕組みを導入するべきである。

資料

  1. GOV.UK. Zoo license (England, Scotland and Wales). 2020年2月28日確認。
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この記事を書いた人

カワウソ研究の専門家を中心とした保全団体です。
アジアに生息するカワウソの保全活動を行っています。

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