訃報

本日は当協会より悲しいお知らせとなります。 当協会の顧問である安藤元一氏(元農大教授)が去る3月24日(火)に逝去されました。日本におけるカワウソ第一人者かつ偉大な研究者であり、闘病しながらも3月まで講義や論文の執筆を続けられておりました。

常にカワウソや湿地保全の第一線におられ、我々次の世代の者に多くのことを教えてくださりました。 ここに謹んで哀悼の意を表します。

日本アジアカワウソ保全協会 一同

安藤元一氏

安藤元一博士 1950年3月27日-2020年3月24日

安藤博士は、1950年3月27日大阪に生まれ、2020年3月24日に享年69歳で膵臓癌でお亡くなりになりました。1973年国際基督教大学教養学部理学科を卒業後、羽仁プロダクションに入りアフリカなどで野生動物映画撮影に携わり、その後、小原秀雄先生のおられる女子栄養大学動物学教室で臨時職員をされました。カワウソとの付き合いは、今泉吉晴氏が1972年から1976年にかけて行った高知県での調査に加わったことから始まっていると思います。1978年、野生動物の研究をするために九州大学農学部大学院に入学され、1982年、大学院在学中に、韓国の慶南大学校生物学科専任講師として赴任され、ほとんど研究されていなかった韓国のカワウソの研究を行いました。1985年にムササビの樹上・滑空適応に関する研究で博士号を取得された後、滋賀県職員となりました。1993年に、世界の湿地保全のために国際湖沼環境委員会事務局職員を兼務し、その後、環境コンサルタントとして世界の湿地保全に携わられました。2001年に東京農業大学に職を得、学生とともにカワウソを含む多くの哺乳類の生態研究を進められました。2015年に農大を定年退職され、ヤマザキ学園大学に移られ、2018年に同大学を退職され、ヤマザキ動物看護大学名誉教授となられました。

私は、1989年に高知県のカワウソの生息状況調査を政府に頼まれましたが、カワウソの調査をしたことがありませんでした。そこで、安藤さんに韓国での調査方法を教えていただきました。その後、安藤さんと私でカワウソ研究グループを設立し、アジア各地でカワウソの研究・普及啓発活動を行いました。1995年に日韓カワウソシンポジウムを日本と韓国で、1996年に国際自然保護連合カワウソ専門家アジアグループ会議をタイで、1997年にカワウソの調査とモニタリングワークショップをタイで、1999年にカワウソの保全と普及啓発ワークショップを台湾で、2000年にトアダン泥炭湿地林におけるカワウソの保全ワークショップをタイで、2002年に汎アジアカワウソワークショップをインドで、ウーミントン国立公園におけるカワウソの保全と普及啓発強化ワークショップをベトナムにおいて開催しました。「湿地の大使-カワウソ保全のための教育・普及啓発手法」の英語版を2001年に、韓国版を2002年に発行しました。これらの活動の間に、彼は国際自然保護連合カワウソ専門家グループに加わられました。

湿地保全について、2006年から2018年のラムサールセンター日本会長をされ、2013年から2018年まで日本湿地学会副会長として活躍されました。野生生物保全論研究会では2006年から理事として活躍され、2013年からお亡くなりになるまで会長としてリーダーシップを取られ、ワシントン条約締約国会議に同団体の派遣団員として参加されました。

韓国で彼と一緒にカワウソの研究をされたハンソンヨン博士は、韓国カワウソ研究センターを2013年に創設されました。カワウソについての大きな業績は、ニホンカワウソ-絶滅に学ぶ保全生物学を2008年に出版されたことです。

安藤さんにいつも感服していたのは、とにかく活字化するということでした。卒論であれ、学会参加記録であれ、とにかく文字で残すということをされておられました。また、安藤さんは、エネルギッシュに活動をされていました。2017年11月に癌が見つかった直後も、アジア湿地シンポジウムに出席されました。2019年に中国で開催されたのカワウソ国際会議にも出席されましたが、これが最後のIOC出席となりました。彼は、多くの講演や外国訪問研究を続け、研究や普及啓発活動を止めることはありませんでした。私は2020年2月に対馬のカワウソの会議でお会いしました。その際に、葬式の準備や棺桶選びを全部自分で済ませたと話されていました。3月もカワウソの原稿をお亡くなりになるまで書き続けられました。カワウソの資料を一緒に整理しましょうと3月にお宅を訪問することを約束していたのですが、かないませんでした。

安藤さんの指導した学生、安藤さんの書かれたカワウソの本に影響を受けた人たちが、育ちつつあります。カワウソ研究や国際的な活動に私を導いて下さった安藤さんがお亡くなられたということの実感はまだありません。二人で作ったカワウソ研究グループから若い人が支える日本アジアカワウソ保全協会へと活動は引き継がれ、安藤さんの蒔いた種は少しずつ育っています。

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この記事を書いた人

カワウソ研究の専門家を中心とした保全団体です。
アジアに生息するカワウソの保全活動を行っています。

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