「世界カワウソの日」記念フォーラムでのご質問

毎年5月の最終水曜日は国際カワウソ保護基金の定める「世界カワウソの日」です。

2020年5月27日に「世界カワウソの日」を記念してカワウソについて語り合うオンラインフォーラムが行われました。 オンラインフォーラムで皆様から頂いたご質問とその回答を下記に掲載させていただきます。

当協会のメンバー、動物園・水族館の飼育技術者、カワウソに縁のある企業の方が集いました「世界カワウソの日」記念オンラインフォーラムのアーカイブはこちらでご覧いただけます。

  1. 次の総選挙は?→現在、次回のカワウソゥ選挙の予定は立っていません。開催の希望があったことは担当に伝えておきます。
  2. 対馬のカワウソをツシマカワウソと呼ぶ人がいるのに違和感を感じるのですが、先生はどうお考えですか?→日本にいるカワウソをニホンカワウソと呼ぶのと同じに思います。その土地固有のカワウソがいて欲しいという願いの表れでしょう。そのことによって、科学的な議論が阻害されるなら困りますが。
  3. 一般の私達が保全などに協力できるのはどんな事がありますか? わたしたちがカワウソに出来ることはありますか?→沢山あります!まずはもちろん、カワウソをはじめとする野生動物をペットとして飼育したりせずに、多くの野生動物が絶滅の危機に瀕していることに関心をもっていただきたいです。そして、IUCN、WWF、日本アジアカワウソ保全協会をはじめとする保全団体が発信している情報を周りに共有する、会員になったり募金を行ったりすることで保全活動をサポートしていただけるとありがたいです。
  4. 今後、ペットとされているコツメカワウソが外来種として日本で問題を起こす危険性もありますでしょうか?そうした問題の報告はまだないですか? 飼えなくなったコツメカワウソが野生化するなんて問題はまだないですか?→昨年の法律の改正により密輸されたものの販売が難しくなっており、捨てられる可能性があります。しかし、今の所、野生化したという情報はありません。イギリスでコツメカワウソが一時期野生化したという報告がありましたが、その後は聞かないので繁殖はしなかったのでしょう。
  5. 国内の動物園水族館で繁殖した個体が動物商に取引されたことがあると聞きます。動物商とペットブーム、園館との関係について皆様はどのように思われますか?→繁殖した個体の飼育管理が重要になります。ただむやみに繁殖させるのではなく、生まれた個体の血統の検討や移動先、どういった環境の収容施設なのかのついて明確にする「繁殖計画」を作成していかなければなりません。
  6. 動物園水族館でも、カワイイだけじゃない、を訴えることには苦心されていると思いますが、 いかがですか?→正直、苦心はしていません。どのように展示すればお客様に伝わるのかを移行錯誤していて、伝えるという事を飼育員たちは楽しんでいます。かわいいの裏側に隠されている意外な一面だったり、抱えている問題をいかに印象強く伝えるか、みなさんからも「こんな解説したらいいんじゃない?」という意見があればぜひお聞かせください!→質問にあるように、カワイイだけじゃないことを伝えるのは苦心しています。なので、今回のようなイベントや、各園館の掲示物、イベントなどで、カワウソの現状を合わせて伝えていくよう頑張っています。
  7. かわいいという事から、どうやったら脱却できそうか?飼育員の方に聞きたいです。→かわいいという事からの脱却は出来ないと思います。フォーラムでもお話があったように人間が好む顔立ちやフォルムをしているそうですからね。真剣に脱却を目指すのなら、飼育をやめることでしょうか・・・。→水族館、動物園ができる事には限界があります。引き続き、カワウソの置かれている状況や生息域保全の話、ペットとして飼うような動物では無 いという事を伝えていきますが、皆様にも保全の話などを SNSなどでも取り上げていただき、カワイイ裏に様々な問題があり、ペットとして飼うような動物では無いという事を主流の声になることで初めて脱却できると思います。
  8. カワウソペット問題の重大さは水族館の各関係者の方も認識していらっしゃると思い ますが、今後この問題について何か啓発などを行う予定はありますでしょうか?CITESI にな ったことで多少マシになるかもしれないですが、まだ気を抜けない状況だと思います。この点 について議論していただきたいです。→世界カワウソの日などにイベントや、掲示物などで各園館が啓発活動をおこなっていますがやはり限界があります。皆様にもご協力いただき、SNS などで啓発活動を拡散、広めていただきたいです。水族館、動物園も引き続きカワウソの問題については啓発活動を続けていきます。
  9. 今日本にいるラッコがいなくなると、日本にはラッコ輸入できないとか、、、ラッコはこれで輸入禁止になったんですかね?→現状、ラッコの新規輸入は厳しい状況にあると思います。新規輸入がないだけでなく、各園館のラッコ飼育施設も改修などで受け入れる環境も無くなってきています。ラッコを飼育するには特別な飼育環境を整える必要があるため、現状の安定した輸入の見込みが立たない状況だと飼育できる園館も限られるのではないでしょうか。
  10. 動物園や水族館でも虫や甲殻類をあげることあるのかな?→桂浜水族館では積極的に虫や甲殻類はあげていません。ただ、展示施設の裏側が山なのでハエ類や蝶類が迷い込んだ時に捕食する事はあります。→サンシャイン水族館ではカワエビを与えています。他の園館ではザリガニなども与えるところがあります。
  11. 猫が遠い親戚だと聞いたのですが!!!→ネコとカワウソは同じ食肉目ではありますがネコはネコ科、カワウソはイタチ科に属しており科レベルで異なるため近しい動物とはいえないですね。
  12. ニホンカワウソが見つかった場合は、そこを国立公園や保護区としたりするのは可能なんでしょうか?→可能です。四国において、かつては、カワウソのために保護区が設置されました。
  13. なぜカワウソは習性として獺祭を行うのですか?→カワウソが部分的に食べた魚を川沿いや海岸におくということは珍しいことではありません。大きな魚では食べきれない場合もあるでしょう。しかし、沢山並べるという話はほとんど聞いたことがありません(一回だけあります)。獺祭は紀元前のお話しですので、自然に対する様々な思いがあるのでは無いでしょうか。
  14. カワウソの種類によって育児の期間や赤ちゃんが泳げるようになる期間は変わってきますか? 赤ちゃんカワウソはどのくらいから自分で泳げるようになるんですか?→いくつか資料を見たのですが、同じ種でも飼育施設によってかなりばらつきがあるようです。個体差によるのかもしれません。コツメカワウソでは、泳ぎの練習は 52-56 日くらいから、離乳は 82-120 日から。ユーラシアカワウソは 2 ヶ月子どもは巣から出てこないという野外の報告があり、離乳は 6 週目くらいから。カナダカワウソでは、泳ぎの練習は、28-58 日くらいから、離乳開始は 54-66 日くらい。ノドブチカワウソでは、泳ぎ開始は 40 日くらいから。オオカワウソで、泳ぎの練習は、2,3 週、63-67 日から、自分で泳ぐのは 4 ヶ月からら。ビロードカワウソは泳ぎの練習は 12から、自分で泳ぐのは 4 ヶ月からら。ビロードカワウソは泳ぎの練習は 12週から、離乳開始は 8-10 週から。
  15. 水族館同士で繁殖計画とかはありますか? 水族館や動物園間で個体の交換・移動などをよく行われていると思いますが対象とする個体の選択などどのように判断しているのでしょうか?→繁殖計画はあります。選出される個体の年齢や血統情報だったり、繁殖施設の平面図だったり、繁殖に関する情報を動物園水族館同士で共有し同意して繁殖計画に沿って繁殖を行ないます。→動物園水族館の各園館が情報をやり取りし、血縁関係なども考慮して繁殖を計画しています。各園館の判断とあわせて血統登録簿を参照し、対象個体の血縁関係も考慮して判断しています。
  16. アクアマリンさんは広いので 2 か所でいいのかもしれないですが、他館ではむしろどのように飼育しているのでしょうか?分けないと結構トラブルが起きたりしますか?→サンシャイン水族館ではそこまで広くないため、1展示施設に 1 家族の展示にしています(注:アクアマリンと異なりコツメカワウソのため群れ飼育可能)。バックヤードでも複数施設に分けてカワウソを飼育しています。カワウソ同士の闘争はかなり激しいため、同居させる場合などは慎重に顔合わせをおこない、一緒にさせています。
  17. 縄張りとかはないんですね。→ユーラシアカワウソは単独で生活して一般的には縄張りを持ちます。ビロードカワウソは群れで縄張りを持つと思われます。しかし、どちらも餌が非常に豊富な場所では、多くのカワウソを一度に観察することがあり、状況によって変化すると言えます。
  18. カワウソは 1 回の出産で何頭くらい出産するのでしょうか?→コツメカワウソで、平均 3.5 頭、ユーラシアカワウソで 2 頭前後、カナダカワウソで 2 から 3 頭などです。
  19. 血統管理はどのように行うのですか?→血統を主に管理している「種別調整者」という方を中心に行ないます。個体情報や繁殖経験の有無、死因など様々なことを管理しています。→動物園水族館で飼育しているカワウソは血統登録簿を作成していて、それぞれの親や血縁関係が分かるようにしています。
  20. シュウ酸カルシウム ストルバイト 結石の種類とかも特徴はあるのかしら?→結石はアルカリ性でできるストルバイトとシュウ酸カルシウム結石の二種類がありますが、カワウソにできやすいのは後者のほうです。ただその結石の要因や形・大きさは多種多様でまだ研究途中の領域です。
  21. 野生にも結石もちはいるのですか?→います。UROLITHIASIS IN FREE-RANGING AND CAPTIVE OTTERS (LUTRA LUTRA AND AONYX CINEREA) IN EUROPE (2017) という論文の研究結果から、野生のユーラシアカワウソでも 23.4%で結石 を保有していたとのことで野生でも形成されるようです。
  22. 環境では無いということですよね?個体差?→ 結石の形成ということであればその要因としてパラトルモン(ホルモン)、ビタミン D, C、腎臓、プロテインやアミノ酸消化、腸内細菌など様々なものが関係していると考えられるので、環境および個体差どちらも影響を与えているといえます。
  23. どうしても動植物園に行くとカワウソを可愛く展示していて、飼ってみたいと思ってしまう人を多くしてしまう=カワウソの密輸等を促進してしまうというジレンマがあると思うのです が、カワウソの種の保存に関して各館がどのような活動を行なっているかお伺いしたいです。→カワウソを見ると、どうしてもかわいいが先行してしまうことが多いです。ただ、それが悪い事だとは捉えてはいません。かわいいを興味の入口として、その背景にある密輸等の問題や面白い生態などを積極的にショー展示時や解説板で知っていただくように心掛けています。→イベントの解説や、世界カワウソの日などのイベントの時にカワウソの保全や密猟、密輸などの問題について伝えています。
  24. ラッコはカワウソの仲間ですが、みなさんにとっては全く別の生物ですか?→同じ仲間ですが、生活環境や食性、体の微妙なつくりの違いに驚きです!→ロシアラッコとコツメカワウソの飼育を担当していましたが、ラッコは冷たい海上生活をおこなうので、餌の量や生活様式が全く異なりますし、大きさも違うので力の強さなども異なります。同じイタチ科ですが全く別の生き物です。
  25. これもコツメカワウソちゃん的には遊びなのかな?→(音声弁別の動画をご覧になっての質問と判断させていただきます)どうすれば餌を獲得できるのか、とゲーム感覚で楽しんでもらえていたら嬉しいですね。野生でもどうしたら獲物を捕食できるのか、と彼らも考えていると思うのでそれに似た感覚を感じてもらえれば飼育員としては大成功です!
  26. 水族館や動物園では、何頭も群れて寝ているイメージがあるのですが、野生下でも そのようにして寝ていますか?また、なぜ固まったり抱き締めたりするようなしぐさをするのですか?→群れ生活をするコツメカワウソやビロードカワウソは集まって寝ます。体の接触が安心感をもたらすのでしょう。
  27. ハーネスの訓練をどうやるのか知りたいです☆→ハーネスに対して怖がらないように訓練します。この時に大切なのはカワウソのペースに合わせてあげることです。同じカワウソでも性格が全然違うのでそれの見極めが重要です。できたらすぐに褒めてあげます。できなくても叩いたり怒ったりはしません。彼らに寄り添いながら何か月も時間をかけてゆっくり訓練していきます。→少しずつ段階をつけてハーネス装着までトレーニングしています。
  28. コツメカワウソの体温はどのくらいですか?品川でカワウソとタッチしたのが思い出です。しかし、人間の体温はカワウソにとって熱かったりしませんか?例えばカエルとかだと人が触りすぎると弱ってしまいます。
    →コツメカワウソの体温は 38°Cぐらいです。恒温動物ですし、人の体温に近い動物なのです。人の体温が熱かったりすることはありません。
  29. 桜と王子の相性はいかがですか? 王子と桜ちゃんの仲は進展してるのかしら。。。?→2 頭の相性はとてもいいです!一緒にあそんだり、寝たり、常にくっついて行動します。交尾行動も何度か確認されていますし、この調子で繁殖もうまくいってほしいです。
  30. カワウソは普段何頭くらいで生活するのでしょうか。親子展示もあるとのことですが、何歳 くらいまで親子は一緒にいるのでしょうか?→コツメカワウソは熱帯林の野生の群れでは 4 頭くらいで、子どもは成獣になると群れを離れると考えられます。ただ、餌が豊富なところでは大きな群れを作ることもあるようです。
  31. カワウソに質問ができたら何を一番教えてほしいですか?→面白い質問ですね!そうですね。。。「カワウソたちが飼育員に何を聞きたいか」を質問しますかね!→して欲しいことを教えて欲しいですね。
  32. 水族館内でのカワウソの繁殖について現状(うまくいっているのか、現状の課題など)について教えていただけますと幸いです。→桂浜水族館内でのカワウソの繁殖は過去に一度だけ経験があります。残念ながら死産でした。現在ではまた新たに繁殖に挑戦しています。課題としては生まれてきた個体のケアが課題です。前回の死産の経験を活かすことと他園館さんからのアドバイスをいただきながら綿密に計画を立てて対策していきます。→水族館内でのコツメカワウソの繁殖はうまくいっています。各園館の血統が限られているのでそれぞれの園館の個体だけで繁殖し続けるのは限界があるので、他園館との個体交換などで血統調整して持続的に繁殖していく必要があります。
  33. 散歩する個体としない個体の違いは何ですか?→桂浜水族館では年齢とトレーニング状況を加味して判断しています。→単純にハーネスを装着できるかどうかです。装着できるやまととジーノを散歩させています。
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この記事を書いた人

カワウソ研究の専門家を中心とした保全団体です。
アジアに生息するカワウソの保全活動を行っています。

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