本記事は連続記事の一部です。関連する以下の記事も、ぜひあわせてご覧ください。
・IOSF主催「ユーラシアカワウソ保全ワークショップ」参加報告
シェットランドのカワウソ
日本アジアカワウソ保全協会 理事長 佐々木 浩
『otters-ecology, behavior and conservation』(2006)の著者であるハンス・クルークさんのカワウソ調査地であり、対馬と同じように海岸にカワウソが生息するシェットランドに、ロンドンで開催されたユーラシアカワウソ保全ワークショップに出席した後に行くことにした。オランダのアディ・ディジョンさんはシェットランドでのクルークさんの調査に参加していたので情報提供をお願いしたら、調査を予定しているということで一緒に行くことになった。また、8月のシンポに参加してくださった香港のマイケル・フィさんもワークショップに参加しており私達のシェットランド行を知って希望され、3人で行くことになった。ワークショップにはシェットランドからジェームズ・ロジャーソンさんが参加しており、写真家でありガイドでもある彼に現地で案内をしていただくことになった。ジェームズさんはカワウソの子殺しについてレポートを書かれている。
ワークショップの翌日11月20日、3人で、コルチェスターからロンドンガトウィック空港まで鉄道で移動し、そこからアバディーン空港までイージージェット、アバディーン空港からシェットランドのサンバラー空港までロンガンエアで移動した。アバディーンからはプロペラ飛行機で1時間半ほどのフライトであるが、料金が片道6万円以上する。空港でレンタカーを借りて、民泊を借りているヴィルディンという本島中部まで暗い中移動し、途中、テスコで買い出しをした。外食ができるような店は近くにほとんど無く、イギリスの物価は日本の2倍以上であるため、朝はシリアル、昼はサンドイッチの自前弁当、夜は自炊である。民泊はまだ新しい家ですごく綺麗で快適であった。
21日は、かつてカワウソを観察していた池に行き、状況を説明して頂く。糞も早速見つかる。糞を継続し排泄するとそこは少し盛り上がり緑の草が生えている。海岸で緑の草がカワウソを見つける鍵にもなる。海にはハイイロアザラシが頭を出している。雨が激しくなってきたので、ヒルズウィック野生生物サンクチュアリーというレスキューセンターを見学に行った。ハイイロアザラシの子供を保護していた。カワウソも一頭保護していたが公開していなかった。道には、シンガポールのようにカワウソ横断注意の道路標識があった。車がすごいスピードで走っているし、カワウソの数が多いから作ったのだろう。シェットランドの地形は基本平たく、低山が少しある程度である。ピート(泥炭)の上に草本が生えるだけで木はほとんどない。ピートという土壌のせいでもあるが、羊が草もしっかり食べていて大きくはならない。
11月末のシェットランドの朝は8時くらいに明るくなり、午後4時にはもう暗い。冬至にも近いため、太陽も低く、長くは活動できない。さすが、北国である。ここはノルウェーのオスロより北で、北緯は60度程度である。夕食は、アディさんが作ってくださったマッシュドポテトのようなオランダの美味しいシチュー。水気がなく日本のものとは全く異なる。
22日は、フェリー二つを乗り継いで、シェットランド、イギリスの最北端にあるへルマネス国立自然保護区を訪れた。この島で北西に面している海岸は、4億年5千万年前に形成された片麻岩と片岩が北海の荒海に削られて断崖絶壁になっている。カワウソもいないことはないようだ。ツノメドリもいるが、この時期はいなかった。
23日は、車を最初のフェリー乗り場に置いて、人だけイェール島に移動し、ジェームズさんの車でカワウソがいるところに案内していただいた。この島の東海岸の多くの場所にカワウソが生息している。シェットランドではカワウソは主に昼行性で干潮になって魚が取りやすくなると出てくるとのこと。海岸沿いを歩き、カワウソを観察する。この日は3頭見ることが出来た。観察は短時間しかできず、写真を撮るのは難しい。望遠も300ミリでは写真撮影は難しい。それでも、ムール貝養殖の浮きにカワウソが登って糞などをしているのを遠くで観察することが出来た。タコがムール貝を食べるので、タコを食べるカワウソは歓迎されている。ロブスターの籠はある程度深い所に沈めるのでカワウソは近づかないし、カワウソは海岸沿いで10センチ程度の魚を主に食べているため、カワウソと漁業との競合はあまりないようである。また、ここでは漁業は大きな産業ではなく、漁港も限られている。
オターヴィック(カワウソ村)にあるジェームズさんの家で昼ごはんを食べた。村といっても家がパラパラあるだけ。鯨なども家から見ることができる素晴らしいところであった。ドローンを使った非常に素晴らしいカワウソの写真を見せていただいた。(「James Rogerson wildlife」で検索してみることが出来ます。)
24日もジェムズさんの案内でイェール島の一つの半島をぐるっと歩いてカワウソを探した。カワウソは、ピート層の上を流れてくる水が溜まっているところで体を洗って塩分を落とし、海岸斜面のピート層に自然に開いた穴を利用して巣を作っていた。これらを巡りながら、この日は4頭のカワウソを見ることが出来た。一頭は目の前で海藻の中から突然顔を出した。もう一頭は、海を見ていて、巣と思われる所の前に新しい土があったので近づいたら、突然目の前に多分オスのカワウソ一頭が飛び出し、視線が合った後、海岸の岩礁に落ちるように逃げていった。申し訳ないことをした。帰る途中で一頭の交通事故死体も発見した。カワウソの密度は高いのだろう。
夕食はフィッシュアンドチップス。ジェームズさんのボスとレストランで会ってアディさんの調査への協力を取り付ける。
25日は、朝早く家を出てサンバラー空港に移動し、アディさんとマイケルさんはアバディーンに向けて出発し、私は空港で昼まで待ってグラスゴーに移動した。次はスコットランドである。

左からジェームズさん、私、アディさん、マイケルさん

カワウソ横断注意の標識

オランダのシチューを頂く

へルマネス国立自然保護区

夕方

ムール貝養殖浮の上のカワウソ(マイケルさん提供)

ピート層に作られたカワウソの巣(沢山の巣穴がある)

海岸から登って左上の巣を利用している。巣まで道ができている。

ピート層の上に水が溜まって出来た池。体についた塩分を洗うのに必要。弱酸性であり、酸化鉄が溶け出して赤い。熱帯と同じ。

カワウソの足跡

移動中に車に撥ねられている

