台湾・金門島での「国際カワウソ保全シンポジウム」参加および現地の保全状況視察報告

カワウソ保全協会理事 岡元友実子

▼要約

毎年、5月の最終水曜日が世界カワウソの日と定められていることから世界各地でカワウソの普及啓発活動が行われるが、2026年は台湾・金門島にて「国際カワウソ保全シンポジウム(International Symposium on Otter Conservation)」が開催されることとなり、弊会の佐々木・岡元が招聘を受け講演を行った。本シンポジウムでは、台湾・韓国・日本の各専門家がカワウソの保全、遺伝研究、地域個体群の現状、ペット利用の課題などについて発表。5月24日のイベント当日は、複数社のメディア取材に加え、会場に定員である60名あまりの市民の方々が訪れたほか、オンライン配信では約2700回の視聴があった。また本シンポジウムの参加にあたっては、金門島に現存するユーラシアカワウソの生息地やモニタリング、保全施策などの現場を実際に視察する機会もあり、住民に普及啓発を行いながら、開発やロードキルといった脅威から小さな離島に残るカワウソを懸命に守ろうとする努力が十分に感じられた。しかし懸命な保全活動の一方で、近年のモニタリング状況からは金門島での生息地が縮小・個体数も減少しているとみられており、元々の個体数が多くなく、小さい島という生息環境からも予断は許さない状況である。また、台湾国内では法律により東南アジア原産のコツメカワウソのペット飼育は禁止されているにも関わらず、近年密輸事件が相次いで発覚していることもカワウソ保全の観点から注視していかねばならない。

▼概要

期間:2026年5月22日~25日

日程:

  • 5月22日(金):日本→台湾・台北
  • 5月23日(土):AM:台湾・台北→金門島 PM:野生動物救護センター、生息地など視察+イベント打ち合わせ
  • 5月24日(日):台湾・カワウソ国際保全シンポジウム(終日) 
  • 5月25日(月):AM:生息地など視察 PM:台湾・金門島→台北→日本

海外からの参加者:日本アジアカワウソ保全協会 佐々木浩・岡元友実子、韓国カワウソ研究センター所長ハン・ソンヨン氏、韓国文化庁研究員 ハン・スンウ氏

◆国際カワウソ保全シンポジウムについて

今回、台湾・金門島にて2026年5月24日に現地のカワウソ保全の気運を高めることを目的として「国際カワウソ保全シンポジウム(International Symposium on Otter Conservation)」が開催され、海外からは韓国・日本のカワウソ専門家がそれぞれ招聘を受け参加した。台湾および韓国の専門家からは現地に生息するユーラシアカワウソの保全施策や個体数推測のためのDNA分析技術、日本の専門家からは日本におけるカワウソの歴史や対馬での保全活動、およびコツメカワウソのペット利用と台湾で近年頻発する密輸問題について発表がなされた。

現地参加の事前申し込みは、受付からわずか2~3日で定員に達する盛況ぶりで、全体で7時間にもおよぶ長丁場ながら現地・オンライン共に最後まで熱心に聞いてくださる方が多く、質問も多く出たことで活発なディスカッションが行われた。

シンポジウムプログラム:

9:00-9:30 受付
9:30 オープニングスピーチ(Hsiang-Lin Chen: 金門県政府副県長/Yi-Ching Wang: 林業保全署自然保全管理チーム長)

10:00-10:30 金門島におけるユーラシアカワウソ個体群のモニタリングと分布状況(袁 守立)

10:30-11:30 日本のカワウソの歴史と対馬における近年の発見(佐々木 浩)

11:30-12:30 韓国におけるユーラシアカワウソの保全状況(ハン・ソンヨン)

12:30 昼食

13:30-14:30 韓国のカワウソ:DNA分析による個体数推定の概観(ハン・スンウ)

14:30-15:30 STOP!コツメカワウソのペット利用 ~何が問題か?何ができるか?~(岡元友実子)

15:30-16:00 野生動物の追跡調査が語るもの ―ツキノワグマ、ベンガルヤマネコ、キテンを例に―(姜博仁)

16:00-16:30 ディスカッション(質疑応答)

16:30 終了

参加者:現地約60名、オンライン約2700名+メディア各社

◆台湾におけるコツメカワウソの密輸

台湾では、東南アジア諸国原産のコツメカワウソは固有のユーラシアカワウソと同様、国内法(野生動物保育法)において保全対象の動物に指定されている。このためコツメカワウソを愛玩目的のペットとして飼育することは禁じられているにもかかわらず、近年台湾向けの本種の密輸が相次いでおり(2023年10・12月、2025年10月、2026年4月、頭数はそれぞれ2頭・2頭・3頭・2頭の計9頭)、一番新しいものでは今年の4月に発覚。発表では、このコツメカワウソの密輸問題を中心として、その他の野生動物の密輸も相次いでいること、またこうした野生動物のペット利用により引き起こされる社会・環境的なリスク(絶滅のおそれが増加するリスク、違法取引が増加するリスク、人獣共通感染症が伝播するリスク、動物福祉を満たせないリスク、外来種化のリスク)について紹介。そしてこれらの課題解決のためには、飼育しないことはもちろん、周囲にこういった情報を共有したり、販売者に対し動物の来歴を確認するなどの全員が一丸となったアクションが欠かせないと訴えた。今後も台湾ではカワウソの違法なペット飼育の需要が高まっている可能性があり、カワウソ保全の観点から注視していかねばならない。

◆カワウソ保全現場視察

① 金門県野生動物レスキューセンター

金門島に到着した後、現地で唯一の野生動物のレスキューセンターである「金門県野生動物救援曁保育協会(Kinmen Wildlife Rehabilitation and Conservation Association:KWRCA)」の施設を見学。これまでにユーラシアカワウソの保護実績はなく普段は主にヘビ類や鳥類の治療・リハビリを行なっているが、今後カワウソが救助された場合、この施設に持ち込まれる可能性がある(場合によっては本島に輸送)。元々は軍の施設であるため小規模で設備も限られているが、野生動物の診療知識がある獣医師が複数名勤務し、業務に当たっている。また本団体は中央政府が設立した組織ではなく、2015年に設立された民間の社団法人である。

②ユーラシアカワウソの生息地や保全施策

金門島に到着した初日と日程最終日にはユーラシアカワウソの生息地や保全施策を複数見学。金門島では降水量が少ないため農業用に作られたため池や湖、そして海岸沿いに痕跡を見ることができるが、ここ数年は西側での痕跡(糞)が減少傾向にあるとのことであった。また金門島中央にある「太湖」では以前安定的にカワウソを観察することができたが、工事の影響かカワウソが遠のき、観察が難しくなっている状況である。

厳しい状況の中、モニタリングや保全施策は継続して行われており、カメラトラップ(赤外線カメラ)以外にもカワウソが上ることができるように設置された「カワウソ階段」、水上の「休憩所」、ロードキルを防ぐための「反射板や警告看板」が各所に設置されていた。

③普及啓発活動・地元住民の巻き込み

金門島では観光資源としての側面もあるが、地元政府が積極的にユーラシアカワウソの普及啓発を行っており、空港やバス停、観光パンフレットなど各所でカワウソのキャラクターが描かれている。さらに昨年カワウソをモチーフにした「カワウソ公園」もオープンし、その存在は島の随所で感じられる。一方で地元住民のカワウソの認知度・関心は十分に高いとは言えない状態で、依然開発などを望む声も高い。このため住民への還元策として、継続してカワウソの存在をカメラトラップ等でモニタリングし、報告を行なった場合には政府から報奨金が支払われる施策も行われている。

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