対馬にまだカワウソはいる

                                                                                  筑紫女学園大学 佐々木 浩

 対馬のカワウソはもう絶滅かもしれないと思いつつ、2024年9月に対馬に短期間行ってきた。地元のベテランのナチュラリストであり、ヤマネコやカワウソについて詳しかった山村さんが亡くなられ、ご焼香をさせていただくことも目的の一つであった。カワウソの情報を対馬市に聞きに行き、佐護でカメラを置いたり、痕跡調査も2日であったが実施したら、佐護でカワウソの足跡を見つけることが出来た。

 2017年に対馬でカワウソの生息が確認されてから7年が経つが、2024年2月にカワウソの糞が採取されたため、その時点での生息は確実である。対馬と類似した環境であるイギリスのシェットランド諸島にユーラシアカワウソが生息しており、そこでの生態寿命は4-5年である。それから考えると、繁殖している可能性があるし、山村さんが考えておられたように対馬にはカワウソが絶滅せずに残っていたと考えることも可能である。

また、今回の対馬訪問で様々な情報を得ることができた。それらをまとめると、下記のようになる。これらの情報から考えると、佐護と大船越に別個体がいると考えるのが妥当ではないかと思われる。ただ、カワウソやヤマネコを対馬で調査されてきた川口さんのお話では、ツシマテンの足跡幅が5センチを超える場合もあるので判定が難しい場合もあるとのことであった。いずれにしろ、まだ生息しているにもかかわらず、対馬でも忘れられつつあるカワウソ状態を把握することは重要と考える。

 2022年          10月 大船越 足跡(環境省)

11月 佐護 足跡(山村氏)

12月 佐護 足跡(山村氏)

12月 佐護 足跡(環境省)

 2023年            2月 佐護 足跡?(環境省)

                            3月 大船越 足跡(対馬市 M氏)

                            9月 大船越 足跡(対馬市 M氏)

                            11月 大船越 足跡(ナチュラリストの方)

2024年            2月 佐護(糞 山本氏(高知大学宇田先生が解析中))                      

3月 大船越 足跡(対馬市 M氏)

                            9月 佐護 足跡 (佐々木)

                            10月 佐護 足跡 (和久氏)

山村氏という地元の貴重なナチュラリストの方を失った後に、どのように対馬のカワウソの状況を把握していくべきかと考え、急遽、「対馬カワウソネットワーク」を本年9月に設立した。カワウソの注目度が高いからと思われるが高知では誰々のカワウソだから情報は教えないといったことが起こっていたため、そのようなことがないように信頼できる方々に参加いただき、進めることができればと考えている。

12月に環境DNAからカワウソを調査する龍谷大学の先生と一緒に対馬に行き、大船越の調査をする予定である。10月に足跡を見つけた和久さんは、足跡からDNAによる種判定を試みる予定である。環境省は対馬でカワウソは繁殖していないとの判断から調査を打ち切ったが、再開すべきでなないだろうか。誰か院生が対馬のカワウソの研究に取り組んでくれないだろうか。

2024年9月に佐護で見つけたカワウソの足跡
シェアで応援お願いします!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

カワウソ研究の専門家を中心とした保全団体です。
アジアに生息するカワウソの保全活動を行っています。

目次